代表・鈴木孝枝のコラム 「そもそも、人は育成すれば成長するのか」 |
2015/2/5 |
さて、今日のお題は「そもそも、人は育成すれば成長するのか」について。
経営者や、人事ご担当者と人財育成についてお話しすると
人の育成は避けて通れない経営課題であることはどなたも認識されています。
ここで、よく話題に上がるのが「成長ののびしろ」です。
そもそも「人は育成しても伸びない、育成自体が無駄だよ!」と考える方もいます。
一方「どんな人もきちんと育成すれば伸びる!」と考える人もいます。
これには正解がありません。
なぜならば、人によって「のびる」ポイントやきっかけが育成側で明確になっていないからです。
本人のやる気や考え方に沿った方法を提供出来れば伸びるでしょう。
与えたきっかけが本人に合致しなければ気づきも得られず伸びません。
では、手っ取り早く「本人」に合致したものを知るにはどうすればよいのでしょうか。
例えば、採用時に、さまざまなサーベイで本人の特性を調べるツールがあります。
本人のストレス耐性やモチベーションポイントまで洗い出してくれる
秀逸なシステムが多数世の中に出回っています。
また、本人の強み、弱みを発見するサーベイも最近注目を浴びており、
「タレントマネジメント」という施策も出てきています。
しかし、実際にそのサーベイを主体にした育成計画を
中長期視点で構築している会社を私は殆どみたことがありません。
多くは階層研修、年次研修や360度評価というこれまでのスタイルを踏襲して、
「一律」に育てながら「選抜」を作るという考え方を育成計画の軸にしているところが殆どです。
約10年近く人事戦略に携わってきた中で、会社の中における「育成」という戦略は、
「とりあえずやる」細切れ対策が圧倒的に多いのが現状だと言わざるを得ません。
そこで、ここ数年、私は「個」に目を向けることの大切さを改めて認識しました。
先に述べた「タレントマネジメント」の実践です。
ジョブローテーションがあるスタイルでも、
職人性を追求し、一つの部署内でスキルを磨くスタイルでも、
「個人」という単位は不変です。
個人を育成していく上で、その人ののびしろはどこにあるのか、
きちんと上司が把握し、仕事を与え、評価していく。
この個人育成計画を構築するほうが、一番費用対効果が見えやすいと思うのです。
一見「個別に育成計画を設計する?!そんな暇はない!」とお叱りを受けそうですが、
未来、その人が引き起こす様々な問題解決に当てる時間を先行投資としてとらえれば、
同じ時間を費やすことになるのではないかと思います。
また、個別育成計画は、思ったよりも費用がかからないと思っています。
なぜならば、育成は基本「仕事を与え、コミュニケーションしながら」
行う現場ありきのスタイルだからです。(スキル習得(資格等)は別として、考えてください)
「見てもらっている」「一人ではない」という安心とともに、
協働の環境づくりがまずは大切だと思っています。
そして、同時に「自分で自分を育てる」という自立性、責任感、向上心を持てる人材かどうか、
本人が自覚しているかどうかも確認できます。
それは、考えて行動する「見える成長」に紐づいているからです。
「のびしろの限界」が見える瞬間が必ずやってきます。
そこが「伸びる・伸びない」の見定めのポイントになるのです。
ここが明確になれば会社内で個の強みを活かし、
弱みを補える強い組織を形成することが出来ます。
だからこそ、見定める側の人間力を高める必要もあります。
さて、ここまで読んで頂いて、「人を育成する」ということに関する
価値観の違いをお感じになられた方もいらっしゃるでしょう。
それも大切な視点だと思います。
私は、会社は人と組織で出来ていると思っています。
人の価値を上げれば組織力も上がり、企業価値も高まり、
ひいては業績にも連動すると考えています。
会社の価値を決めるのは未来のお客様です。
その相手をするのは今、目の前にいるあなたの部下だったりします。
人は「適切に」育成すれば効果が見えるものです。
この「適切に」という部分を、経営者、人事担当者の皆様は、
短期で回答を得ようとする傾向があります。
だからこそ中長期経営戦略とリンクさせて育成を考えてみてください。
1日や1週間の研修で、10年後の経営者候補はいきなり育つのでしょうか。
自分の仕事を今より発展してくれるだろう後継者は、
日ごろ現場の取り組みの中で育つのだと思います。
緩急をつけて、個の成長を見守り、促す。その成長を適正に評価する。
これからは、会社という競争原理が働く場でも
人間が人間を育てる原点回帰がすすむ、と思っています。
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